2023
04/25
04/25
財布
自転車を運転していると、前方に名刺入れくらいの黒くて四角いものを見つける。自転車を停めて拾い上げると、その黒くて四角いものは、財布だった。
一番初めに頭によぎったのは「めんどくせえなぁ」だった。
拾ったところがお店の前だったから、そのお店に渡すことを検討するが、面倒をなすりつけるだけだから却下。道に戻すのも、後ろめたさを感じるから却下。そのまま頂戴するという選択肢は、罪悪感で生活に支障をきたすことが容易に想像できたから検討さえしなかった。
こんな大切なものを落とすなよ、バカタレ・・・とは思ったけれど、自分も過去に幾度も財布を落としてきたので、悪態をつく権利は私にはない。
諦めて周辺の環境を頭に浮かべると、3分ほどで着く場所に交番があることを思い出し、うんざりしながら交番に向かう。
交番に行くと、お巡りさんがいる。いなければ置き手紙でも書いて帰ろうと思っていたので、またうんざりする。
お巡りさんに財布を渡すと、すぐにスマホくらいの小さな書類を渡される。
その書類に住所などを書いている間に、お巡りさんは財布の中身をテキパキと確認し、話し始めた。
拾った人には拾った人としての権利が生まれ、相応の報酬をもらうことができる。ただ権利を放棄すれば、それ以上の手続きは必要ない。
それを聞いて、「権利を放棄します」のチェックボックスにチェックを入れて交番を出る。
交番に滞在していた時間は3分ほどだったように思う。こんなに簡単なら拾ってすぐに届ければ良かった。
それにしても、小学生の頃は”財布を拾いたい”という願望を持ちながら日々生きていたように記憶するが、人間は変わるものだ。