人体の面白さを伝えたい。

医学に関する講義を受けて、ノートにまとめてほしい。
永岡書店様からのご依頼でした。

『医学について知識のない人が、一つ一つ理解しながら作ったイラストいっぱいのノート』

そうしたものがあれば、医療分野を志す人の役に立つのではないか。と企画されたそうです。
面白そうとは思いましたが、あまりに先が見えない。
「どうなるかわかりませんが、やってみます。」と煮え切らない返事がやっとでした。

そんな私に「わからないことがあったら、すぐにお電話ください。」と声をかけてくれたのが、本の著者で、講義もされる菅本先生。先生は当時、大阪大学で教授をしながら、整形外科医として現場にも立たれていました。

講義は1回2時間ほど。楽しくて、あっという間。
「人体って、よくできてるんですねぇ」と言うと
「本当に不思議です。だれがこんなにうまく作ったんだろうと感心します。」とおっしゃっていました。

人体のしくみ、その面白さを知ること。それが医学を学んでいく上で、とても大事だとおっしゃっていました。本の中にある先生の言葉を引用します。

そもそも人体は、どんなしくみになっているのだろう?なぜ、そのしくみになっているのだろう?本書は、その単純な疑問にできるだけ答えられるように書かれています。それを理解できれば、その延長線上に、いろいろな病気ではどこがおかしくなって、そのためにどんな症状が出るんだろう?それをどのように治療していくべきなんだろう?ということが単なる暗記ではなく、自分で考えながら答えられるようになります。(『そもそも人体』P8はじめにより)

講義で感じた人体の面白さを、どう表現するか。ノートをつくる上でとても重要な課題でした。

家に戻って、いざ内容をまとめようとすると、すぐ手が止まります。
講義は楽しかったから、理解したと思っていたら、全くわかっていなかった・・。

菅本先生にすぐ電話。改めて解説を聞いて、また「へぇ〜!!」と驚く。まとめる作業に戻って、行き詰まったら、スマホを手に伸ばす・・の繰り返し。ノートが完成するまで、少なくとも100回は電話しました。

作成したノートの一部。IllustratorとPhotoshopで作成。学生がノートをとったような臨場感が欲しいとのことで、ボールペンと蛍光ペンで描いたようなタッチにしました。

1つの講義がまとまれば次の講義。そんなことを11回。5ヶ月かけて本の下地となるノートが完成。

全体が見えたところで、イラストサンプルを作ります。

Aは骨・神経・筋肉・血管が確認できるサンプル。Bはガイド役のキャラクター。Cは細胞。初めに想定されていたノートのタッチは、わかりにくいとなってボツ。しっかり着色したイラストに変更。
Dは骨の構造を細かく説明するためのイラスト。何度かやり取りを重ねてOKが出ました。

タッチが決まれば、あとはどんどんイラストを仕上げていきます。

ラフ→仕上げのいくつか。

菅本先生はいつも楽しそうに、不思議そうに、人体のことをお話しされます。
私も大変なこともありましたが、楽しんでノートを作りました。

本を手に取っていただけた方に「人体って面白いなぁ」なんて思ってもらえれば、嬉しいです。
菅本先生が動画で本の解説をされています。こちらもご覧ください。

依頼主がイラストにしてもらいたい情報を、自分自身で十分に理解したうえでイラストにすることがイラストレーターには求められると思うのですが、まさにそのような素晴らしい仕事をしていただき、本当に感謝しています。(菅本一臣 様)


追記
本に文言の間違いがあったとのことです。こちらもリンクしておきます。
https://www.nagaokashoten.co.jp/info/2022/08/25/13337/

そもそも人体 本の挿絵

制作時期
2020/3/30 - 2021/12/15
制作日数
ラフ5ヶ月 仕上げ3ヶ月
制作物
1630点
使用ソフト
Photoshop
ほか
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