2023
08/07

ケーキ

妻の誕生日、ケーキを買うことにする。Googleマップで周辺を検索。家から15分ほどの店に向かう。

賑やかな商店街を少し外れ、古い長屋を改装したオシャレっぽい建物。その一画に目当てのケーキ屋はあった。入ると静か。誰もいない。右手にはショーケース、上には”注文を決めてからお呼びください。”と書かれた紙。まだ14時ごろだったが、展示が既に歯抜け。ほぼ選択の余地が無い中、注文を決め、店員を呼ぶ。

出てきた小柄な女性に目当てのケーキを伝えると「それは取置き品です。」と返ってきた。粗野な返答に少し驚くも、改めて注文。今度は「持ち帰りの場合、10分以内が原則です。」と伝えられる。暑さのせいで保冷剤が役に立たないとのことだった。

そう言われ、帰路を思い浮かべる。10分では帰れそうにないが、たぶん大丈夫と言う。すると、フッと苦笑い。「そちらが良ければ良いんですけどね。」と返ってきた。有料の保冷バッグを提案され、お願いする。

梱包の間、周辺を見渡した。左の壁にあるカレンダーには赤字で”8月はお休みします”と書いてある。それについて質問すると、「予約は受けます。だからお店にはいます。でもお店は開けません。そちらに時間を取られますから。」と答えてくれた。その期間を彼女は「仕込み」と表現した。どんなことをするかはわからない。ただ、その目と言葉に強い意志を感じた。

少しだけ急いで帰路に着く。開けると保冷剤が箱の中で丁寧に配置されている。購入したのはメロンのショートケーキ。正直、イチゴの方が良かった。ケーキに入ったメロンに良いイメージもない。ただ今回のメロンは濃厚、それだけでも十分に美味しい。対して生クリームは控えめでちょうど良い。その対比にきめ細やかさを感じる。「うまいねぇ」と何度か呟きながら食べ終わった。

それだけで接客の粗野さも素敵な職人気質に思えてくる。そして、また行くと思う。

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