2023
06/06

穴場

嵐山は観光客でいっぱい。目的地と思しき場所にも長蛇の列。コロナの終息を感じ、橋本関雪の人気に驚く。とはいえ、3つの会場で一挙に展示が行われている。そんな人だから行列も当然だ。と思ったら美術館近くのカフェの行列だった。

カフェを横目に路地を曲がると人は一気にいなくなる。目的地である福田美術館は無音とさえ思えた。利用者限定のカフェも混んでいる様子はない。嵐山で優雅な時間を過ごせる穴場かもしれない。

館内も人はまばら。おかげで贅沢な鑑賞になる。大きな屏風絵も独り占め。遠くに行ったり、ガラスにぶつかるほど近づいたり、全体と細部を交互に見るワガママが許された。

描く対象が動物や植物であっても一貫して艶かしい。生き生きとしているのに受ける印象は静寂。不思議だ。細部に見える大胆な筆致とその見事な制御に興奮。「うめぇ」と失礼な一言を漏らしてしまう。

画集を買って、もう一つの会場に移動。嵯峨嵐山文化館に行く。前会場と同様に素晴らしい絵が並ぶ。とりわけ心惹かれたのはカワイイ大黒様だ。関雪は大津絵と呼ばれるポップな絵も描いたようだ。そんな一面を見せられて、より好きになる。

矢印に従って2階に登るとすぐに土足厳禁の文字と下駄箱。靴を脱いで進むと、一面畳の大広間が現れる。その側面には、いくつかの掛け軸と大きな屏風絵が2つ飾ってあった。一通り近くで眺めた後、釈迦涅槃図みたいに寝そべって鑑賞。

何処ぞの金持ちだろう・・。といい気分。

寝転がりながら絵の周りをウロウロ、その場でしかできない鑑賞を楽しむ。悦の中、視界に入った靴下に違和感。穴が開いていた。

優雅な時間をこんな形で台無しにされるとは思わなかった。

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