2025
09/26

2025年9月の見たり読んだり

つきしま かるかや/日本民藝館
「築島物語絵巻」をはじめて見た赤瀬川原平さんが「ほしい」と言ったそうだ。
スゴイ人と似たような欲を持てたことを喜ぶ。で、2013年に日本民藝館で行われた特別展の図録。たぶん、世の図録の中で「築島物語絵巻」を一番楽しめるのではなかろうか。他にも味わいある絵がいろいろ紹介されてはいるが、やはり「築島物語絵巻」だ。字は洗練されているのに、人や船はユルユル。けれど馬には”腕に覚えあり”な描きっぷり。『書画同一』からのハミ出しが、気持ちが良い。図録を妻に自慢したら「うんうん。いいね」と子どもに同意するような相槌を打ってくれた。

睥睨するヘーゲル/池田晶子
”当たり前”の前にして立ち止まり、驚き、疑い、考える。文章で使われる言葉のひとつひとつはポップだしむずかしくない。でも彼女の思惟の後となると”分かる”とは言えず「おぉ・・」となる。ただただ読みながら「こいつはマジだ」と思い、読み終わるとまた読み返したいなとか思う。たまに池田晶子さんに睥睨されるのは悪くない。

季節はこのまま/オリヴィエ・アサヤス
2020年、小さな村のきれいな庭のある家。籠もるのは中年の兄弟とそれぞれの恋人。なかなか恵まれたロックダウンだ。少し前のことなのに当時のことを忘れている。コロナに怯える男につい笑う。でも自分も同じようなことをしていたと思う。しかし今となっては、ダンボールに残るウイルスとか、綿密な手洗いは、世界共通で笑ってしまう”あるある”なのかもしれない。もう一度経験したいとは思わないのだけど、悪いことばかりではなかったんだよなぁ、などと観ながらあの頃を振り返る。

六つの顔/犬童一心
か・・か・・か・・か・・と杖で舞台をたたく音だけの数分。ぜいたくな間だ。
目の見えない夫と支えてきた妻の姿を追ううちに、二人の声が気持ち良くなってくる。目を閉じて声だけを楽しもうとしたら、ちょっと寝た。狂言の「川上」という演目らしい。映像を観ながら、なぜか終始ニンマリしていた。理由は、喜劇だからかも知れないが、もしかすると主役である野村万作さんとその父・万蔵さんの”すごい笑顔”に影響されたから、かもしれない。笑顔を見て『形相』という言葉が浮かんだのは初めてだった。

みんなでつくっちゃった/長新太
”なんだかわからないけど好き”と思える絵本が好きだ。というせいで、長新太さんの絵本をつい手に取ってしまう。読めば案の定”なんだかわからないけど好き”な気分になった。初めの見開きからステキー!である。

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