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2025年8月の見たり読んだり

◯極北/フリッチョフ ナンセン
犬たちにソリを引かせ、へこたれたヤツにはムチを入れ、役に立たなくなれば殺して他の犬のエサにする。熊やセイウチを見つければ鉄砲で打って食料にする。冒険家というのはなかなかエグい仕事だ。と書いたところで自分も同じことをしていることに気づく。ナンセンと違うのは、そのことを忘れるほどに姑息に行っていることだろう。
芽生えた欲望のために、お金を集め、船を作り、イヌイットに動物のさばき方や犬ぞりを習い、凍傷に耐えながら氷と空だけの世界をひたすら進む。自分の冒険に関わった人たちを無事に故郷に返せる具体的な準備をする。いやぁすごい。
◯人間と象徴/カール グスタフ ユング
ユングが書いた唯一の一般向けの著作だそうだ。一章だけ自分で書き、他の章は弟子たちに振り分け、プロットの完成を見届けてユングは亡くなったらしい。ということで彼の遺作。
夢を無意識からのメッセージと考えていた彼らの本を読むと、夢をもっと大事にしなきゃな気分になる。ちなみに妻によると、私は寝言でよく相槌を打っているらしい。
◯東洋思想の構造(井筒俊彦英文著作翻訳コレクション)/井筒俊彦
井筒俊彦さんのことは”イスラム文化に詳しい人”程度の認識しかなかったけれど、大いに間違っていたようだ。イスラム教・仏教・儒教・老荘思想などなどを横断して、なんだかすごいことを語っている、気がする。西洋の人たち向けの講話なせいか、素人にも東洋思想とか井筒俊彦さんの入門書になる本だ、と思う。
◯はいくないきもの/谷川俊太郎 (著)・皆川明 (イラスト)
音が聞きたくて小さな声で読んでみる。子どもが言葉を覚えたあたりに一緒に読みたかったなぁと思う本。
◯ほかげ/塚本晋也
戦火の後、体しか残らなかった女と、心が壊れた男と、鬼になった男。彼らと過ごす少年。最後に女が叫ぶことは少年への願いであり、私たちの普通。それだけに重い。
住んでる国が戦争をしていたら、その環境に合わせなきゃ生きられない。合わせたら合わせたで戦後には弊害として残る。逃げるというのもあるけれど、それはそれでまたタフそうだ。いやぁ、キツい。今の日本でしか生きられそうにない自分を思い、平和を願う。


