2024
10/10
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あいのり

エレベーターに乗るとショウリョウバッタがいる。
10センチほどの大きさで、ドアにくっついていた。
バッタを見るとナニバッタかがすぐ分かる。他にもセミの鳴き声を聞き分けられるし、ミヤマクワガタの足が取れやすいことも知っているのだ。兄の影響である。小さい頃、彼の後ろにくっついて歩くうちに、自然と覚えていたのだ。
先日、兄の家に行くと、窓から見える田んぼを兄はじっと眺めていた。サギが飛んできたとか、渡り鳥の中に違う鳥が混じっているだとかを、誰に話すでもなく、ニコニコと話す。声に出してしまっているという感じだ。たぶん、その楽し気な感じが魅力的で、後ろをついて回ったのかもしれない。
兄ほど虫には夢中にはなれない。と、思った時のことを覚えている。小4の夏、家族旅行で行った岡山で、夜に二人で虫を取りに行った時だ。彼は父の運転する車に乗りながら、旅館近くの街灯をチェックしていて、夜の灯りに集まる虫を取りに行こうとなった。大阪の暗さとは濃さの違う夜を、ビクビクと歩く。収穫が無くても兄は引き返す素振りを見せない。ズンズンと進む兄にくっつきながら、「もう付き合いきれない」とベソをかきながら思ったのだ。
エレベーターが降りる階に到着。扉が開くとショウリョウバッタが巻き込まれていく。ひともがきして、こちらへ飛んできた。顔を手で覆ってしゃがんで避ける。急いで降りたあとも心臓はバクバク。
最近知ったが、どうやら私は虫が苦手なようだ。