『グラフィック・デザイン全史』という本を読む。
この本は「文字の発明」からスタートする。グラフィック・デザインが対峙する根本的な課題は、人と人がコミュニケーションを取ることの難しさにあり、その解決としての大きな一歩が文字の発明というところだろうか。そんな絵や文字の起源から話は展開していく。
こういった傾向の本を作るとなると、有名な作品をただ並べた資料集のようになってしまいそうだが、この本は違う。歴史の流れをきちんと描きながらも、時代を担った人物たちのことも丁寧に描かれているため、天才たちの人となりを感じられて楽しい。
本を読みながら、どんな時代でも文字や絵をできうる限り美しく表現したいという欲求があることに嬉しくなり、その表現の多様さに興奮し、ルネサンスが字体にも影響していたことを知って驚き、印刷機やカメラなどの発明がこの分野のルールを根底から変えていく様を追体験する。
adobeのソフトや日常的に文章作成ソフトで利用するフォントに対して、あまりにも当たり前に与えられていることもあって、私はそれらがなかった頃のことを考えることは無いのだが、この本の中に出てくる天才たちの中には、その当たり前の美しさの秘密を人生をかけて追いかけていたりする。そんなことを感じられるだけで、畏敬の念が湧いて、フォント選びもちょっと慎重になったりする。
もし歴史が好きな人でデザインに興味のある人であれば、この本はこの分野の最高の入門書なのではないだろうか。
絶版ではあるが。。